花嫁に読むラブレター
(……自分で決めたのになあ。マイアさんがぼくだけを見てくれるまで触れることはしない、って)
約束を交わしたわけではない。ただ自分の中だけで決めたこと。
マイアの心の中に、自分ではない誰かがいるのを知っていながら、手を伸ばした。ユンの手を受け取ったときのマイアに、迷いがまだ残っているのも感じていた。けれど、それでもユンは躊躇わず、マイアを自分のものにした。
傍にいてくれるだけで満足だったのだ。だから、自分自身に戒めを与えたのだ。そうすることで、少しでも罪悪感を少なくするために。しかし、その我慢もそろそろ限界を迎えようとしていた。
思わずため息が漏れた。
物思いに耽って知らず知らずのうちに俯いていた顔をあげると、レナータの後ろ姿が遠方に見えた。声をかけようと、息を吸い込んで――口を閉じた。