花嫁に読むラブレター
氷水に浸けたような冷たい指がマイアの首に絡まった瞬間、頑固な眠気は一瞬にして消え去った。
頭の中が真っ白になる。
何も考えられなかった。なぜ、とも、どうして、とも。ただ、激することもなく無言でいるレナータの顔を見つめることしかできなかった。その表情は、普段レナータが二人きりのときマイアに見せるものと何も変わっていない。一見、無表情にも見える冷めた面持ち。だが、その眼の奥には激しい怒りとも嫌悪とも取れる、マイアに対して否定的な感情の炎が揺らいでいる。決して言葉で怒鳴りつけることもなく、だからこそ、この今の状況が何を意味しているのか、マイアにはさっぱりわからなかった。ただ、指が冷たい。それだけが頭の中に浮かんできた。
「ステイル、といったわね。彼はなんで毎月毎月、決まった日に必ず手紙をよこしてくるのかしら」
背筋に寒気が走るほど、静かな声でレナータは言う。
問いかけるような口調の中に、マイアを厳しく批判する思いが込められている。マイアの答えなど、最初から期待していないのだろう。口を開きかけた瞬間、レナータがそれを塞ぐように言葉を重ねた。