花嫁に読むラブレター

 身の危険を感じる恐怖ではない。レナータが持っている小ぶりのナイフが、自分に向かって振り上げられたら、と考えなかったわけでもない。けれど、目の前で繰り広げられているレナータの様子は、それ以上の恐怖をマイアに与えた。親の仇をめった斬りにでもするかのように、ひたすらに自分を見失いながらも手紙を切り裂く様子は、ただ恐ろしかった。長い髪が揺れ、頬を何度も叩く。時おり覗くレナータの見開かれた目は、もう周りを映していなかった。

「やめて!」

 身を乗り出し、マイアはレナータの腕にしがみついた。

 あれほど激しかった動きを一瞬にして止め、レナータは大きく見開いた目でマイアを睨みつけた。

「やっぱり、あなたたち通じ合っているのね」

「なんでそんな話になるの! 違うわ、とにかく落ち着いて!」

 レナータにしがみついている腕が震えたが、それでもマイアは彼女の腕を離さなかった。

「違う? よくそんな白々しい嘘がつけたものね。少なくとも、彼のほうはあなたのことを好いているじゃない。違うというのなら、なぜ手紙を受け取り続けるの?」
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