花嫁に読むラブレター
「……お願い、あなたには帰る場所があるんでしょ? 私からユン様をとらないで。――帰って、もうここには来ないで」
「いやよ。それは絶対にいや」
マイアはレナータを見上げたまま、はっきりとした口調で言った。
「何が何でも、ユンは絶対に返さない」
次の瞬間、レナータの顔がみるみる険しくなっていく。目を見開き、歯を噛みしめ、薄く開いた唇が微かに震えている。
やがて、ふっと力を抜いて微笑を浮かべた。恐ろしいほど穏やかな笑みで、マイアは眉をひそめる。
唐突に、レナータがナイフを振り上げた。
ナイフの刃が朝日に照らされ、煌めいたのを見た直後、マイアは思わずきつく目を閉じた。
しかし、ナイフが振り下ろされるよりも前に、レナータはシーツの上に広がるマイアの髪を乱暴に掴み、ナイフで切り刻み始めた。
髪を引っ張られた痛みで、反射的に目を開ける。マイアの目の前を、切られていく髪の束が落ちていく。シーツの上に信じられないほどたくさんの髪が落ちているのを見て、胸の奥に大きな石を落としたような、痛みとも苦しみとも取れる、ひどく息苦しい気分に襲われた。