花嫁に読むラブレター
目尻が熱くなるのを感じ、しかし懸命に目を瞠って堪えた。
痛みか、悔しさか、恐怖か――。
声をあげて泣きたいと思った。けれど、レナータの前では絶対に泣きたくない。それだけの一念で、我慢している自分の姿すら見せたくなかったマイアは、唇をかむことすらしなかった。
短くなった髪から通り抜ける風が、うなじに触れ寒い。
まるでマイアの心の中に吹きすさぶかのように、冷たさはマイアの全身を包んだ。
視線を落とした先に見えた自分の指先が微かに震えているのを見て、ぎゅっと握りしめた。
「――レナータ、マイアさんをぼくに返して」
レナータの手の動きが止まる。マイアは一瞬、肩を震わせた後、入口を振り返ったレナータを呆然と見つめる。
声で誰なのかは、すぐにわかった。
マイアはしかし振り返られずにいた。
恥ずかしかった。情けなかった。マイアの負けん気が頬を上気させた。髪を切られ、抵抗できずにただぼんやりとされるがままの自分を見られていたことに、頭が真っ白になる。惨めな様子を見られたという事実が、マイアの体を震わせた。
あれほど頑なに耐えていた涙が、次々と頬を伝った。