花嫁に読むラブレター
3.あなたに手紙を
レナータが、突然屋敷から姿を消した。
髪を無残に切り刻まれ、ユンと並んで穏やかな面持ちで眠っているマイアを見つけたのは、フィーネだった。
シーツの上に散らばったマイアの髪と、不揃いになってしまったマイアの髪を見て、泣きながら抱きしめた。喉がかすれるほど何度も何度も頭を下げるフィーネを見て、マイアは涙を浮かべた。悲しいわけでも、悔しいわけでもなかった。けれど、なぜか涙が止まらなかったのだ。フィーネの腕は熱く、心が湯に浸かったかのように温かくなると同時、とても申し訳ない気持ちにさせられる。フィーネに何も言えなかった自分の臆病さに言葉を失い、マイアもただ首を横に振ることしかできなかった。
「レナータがユンのことを好きだってことは、みんな知っていたわ……。でも、まさか、こんなことをするまで思い詰めていたなんて」
フィーネは手で顔を覆い、声を潜めて泣いた。
「フィーネさん、もう『ごめんなさい』は言ってはだめ。わたし、もう聞きたくないもの。――そうね、お詫びじゃないけれど、この髪を綺麗に揃えて欲しいの。ユンから聞いたわ。フィーネさんは、こういった作業がお得意なんでしょう?」