花嫁に読むラブレター
暗い影ひとつ見せず、ばらばらの髪を指差してみせたマイアに、フィーネも涙で濡れた笑顔で何度も頷いた。「ええ、それなら、今以上に女らしく見える髪型にしましょう」と。
細いうなじが見えていた髪の長さも、あれから四年経った現在、随分と伸びた。
丸みのあった顎もしゅっと引き締まり、目元には大人の落ち着きが宿っている。唐突に驚いて席から立ち上がったり、大声をあげたりといった慌ただしさはなくなり、表情だけで感情を表すことも多くなってきた。フィーネを筆頭に、周りにいる大人がみな冷静な者ばかりだからこそ、ともいえた。自然と身に着いたマイアの佇まいは、いっそうマイアを美しく見せた。
レナータがいなくなった後も、ステイルからの手紙は相変わらず律儀に届いた。しかし、最近になって、ぴたりと止まった。訝しく思ったマイアだったが、その頃はすでにステイルへの気持ちはマイア自身も驚くほど薄く、顔を思い出そうとして、ようやくぼんやりとした輪郭を懐かしむくらいだった。
「マイアちゃん、お城に住んでみたくない?」
何の前触れもなく、フィーネは話を切り出した。