花嫁に読むラブレター
先ほどまで、淹れたての紅茶とカーヤが焼いてくれたクッキーを話題に盛り上がっていたというのに、ふいに真面目な面持ちで告げるフィーネの言葉が不思議でしかたがなかった。美味しいロイヤルミルクティの作り方は、茶葉をお湯で煮込むのよ。茶葉をある程度開かせたあとにミルクをいれないと、ミルクの成分は茶葉を包んでしまうから折角の香りが台無しになってしまう――と、熱弁していた数秒後、唐突の言葉だった。
マイアはカップを手にしたまま、目を大きく開いて何度か瞬いた。
クッキーにも負けないほど甘くしたミルクティを飲むのが、ここアルヴィオン家に来てから日課になってきていた。今では香りでどの茶葉を使ったかわかるほどになってきたマイアだが、この瞬間、いっきに紅茶の味が遠くに行ってしまったようだった。
「え、どういうこと、フィーネさん」
「マリーやブラウンたちは、もう先にお城に行ってもらってるのよ」
マイアは懐かしい名前にさらに目を丸くした。
「……ごめんなさいね。なかなか言い出せなかったの。できればここでお城とは関係なく穏やかに過ごしてもらいたかったのもあるのよ。でもね――」