花嫁に読むラブレター
フィーネは珍しく眉根を寄せて、一瞬ためらったあと、渋々といった表情でゆっくりと子供に言い聞かせるようにマイアの目を見つめて口を開いた。
「隣の国と領土問題で、各地で小競り合いが続いているのは知ってる? つい先月も東の国境の土地がいくつか破られたわ。
今ね、伝染病が国内で広がっているの。クラウスもユンも最近帰ってこられないのはそのせいなのよ。
――きっと、これからもっともっとひどくなる。ここにはなんの備えもないの。今を食べていくのが精一杯。そのうち街に行くことすらできなくなったら、本当に何もできなくなるの。病気に罹っても、治すこともできないわ……」
マイアは静かに頷くのみで、何も言わなかった。
知っていた。
ステイルからまだ手紙が届いていた頃、今の世の中がどのようになっているか、いつも細かく手紙に書かれていたから。ユンの帰りがなくなったことも、夕食に並べられる品数が少しずつ減ってきていることも、全部知っていた。