花嫁に読むラブレター
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マリーおばさんたちが生活している部屋に案内され、マイアが扉を押し開けると少し痩せたおばさんの驚いた顔が飛び込んできた。
幽霊でも見たかのように、部屋の中にいた者たち全員が固まってマイアを見た。
不自然な沈黙の中、マリーおばさんがよろよろとマイアに近づく。相変わらず乾燥してがさがさした指でマイアの頬に触れ、勢いよくマイアを抱きしめた。
おばさんにぎゅっと抱きつくと、いつも山羊の乳のにおいがしていた。けれど、今はしない。たったそれだけのことなのに、冷たい悲しみが胸の中に沁みた。背中に回された腕が以前のような柔らかさに欠けることも、目元に走る皺が増えたことも、なにもかもがマイアを切なくさせる。
みんなと暮らしていた家を出てから六年。
たった六年。そう思っていたのに。こんなにも違うものなのだろうか。
マリーおばさんの肩越しから見えるシェリィの目が柔らかく微笑んだ。幼い女の子から、少女の表情にかわっている。シェリィだけではない。マイアの視界に入る、知っているはずのみんなの顔が少しずつ違う。それでも面影は残っていて、懐かしさと初対面の人間に対する緊張とが混ざったような、不思議な高揚がマイアを襲った。