花嫁に読むラブレター
「で、でもステイル、あなた騎士になりたい、戦争に参加したいって言っていたじゃない。外国人だろう自分を受け入れてくれた国に恩返しがしたい、って。わたしが結婚すれば、ステイルにだって、ちゃんとした戸籍が貰えるのよ?」
マイアもステイルも孤児だ。
二人が住んでいるこの土地も生活費用も、何からなにまで国の税金と貴族たちからの寄付金で支えられている。戸籍を与えられない孤児は、仕事に就くことができない。もちろん、ステイルが願うように、騎士になることはもちろん、戦争があったときに戦列に参加することすらできない。国の男性が、自分の家族や大切な者を守るために戦へと向かうとき、孤児の男性は、ただ守られる側でしかないのだ。
けれど、マイアを妻にと望む者は、マイアを含め彼女と生活を共にする二十人近くの孤児を自分の戸籍に迎え入れるとまで言ってくれている。こんなありがたい話はない、と、施設でマイアたちの面倒を見ているマリーおばさんは言う。