花嫁に読むラブレター

 今日は週に一回、街に下りる日である。

 街から徒歩で一時間ほど外れに向かった丘の上に、マイアたちが住む家はあった。パンやミルクにチーズ。ちょっとした野菜や生活必需品ならば自分たちの手で育てたり作ったりすることができたが、それでも限界がある。こうして街に下りて必要なものを買い揃える仕事は、マイアの仕事だった。

 この日もまだ軽い鞄を背負い、丘を下りる途中の長い石段で足を止めた。

 晴れた日は、湖を挟んだ先にあるアルギスの丘の上に建つ邸宅がよく見える。どんな王さまが住んでいるのかと思わせる、豪壮な佇まい。太陽の光を受けた鮮やかな緑の中に、色とりどりの小花が風に揺れている様子も、マイアにはよく見えた。春に咲く花は、見ているだけで元気を貰える気分になるが、秋の花はなんだか切なさを運んでくる。


 マイアはその屋敷をしばらく見つめたあと、突然に走り出した。
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