花嫁に読むラブレター
「ステイル!」
切れ切れに息を吐きながら、マイアは駆け上った丘の上で声を張り上げた。
木陰に佇んで、高台から望める街をぼんやりと見つめていたステイルが、マイアの声に振り向く。片眉がぴくりと動いた。
乏しい表情から何を思っているのかは読み取れないが、それでも不機嫌であることはわかる。目の奥は、湖の底を思わせる冷たさが漂っていた。
ステイルの様子に、マイアは尻込みする。けれど、竦んで下がってしまいそうな足をなんとか一歩踏み出して、ステイルに近寄った。その間も、ステイルは腕を組み、体重を木の幹に預けながら動こうとはしない。
昼の厳しい日差しも、重なり合った樹冠の影になってひんやりした空気に隠されていた。ステイルの頬や腕に落ちた葉の影が風に揺られている。
ステイルの視線の先を辿ると、先ほどまでマイアがユンと共に歩いていた石段が見えた。ユンは相変わらず石段の途中で腰を下ろしたまま、頬杖をついて遠くを眺めている。風がユンの髪を揺らす光景も、高台からはありありと映っていた。
「何しにきたの」
ステイルは、ため息のような声で言った。