花嫁に読むラブレター

「何って……。何で、あいさつもしてくれないのよ。ずっと一緒に暮らしてきたのに、こんなときくらい優しくしてくれてもいいじゃない」

 震えそうになる声を必死に絞りだし、マイアはなんとか言い切った。

 ステイルは、視線だけでマイアを振り返り、冷めた一瞥をくれると再び丘の下を眺める。そんないつも以上に無関心で迎えるステイルの様子に、マイアは胸の奥がじわじわと熱くなるのを感じた。

 ただ話をしたかっただけなのに。元気でいてね、と伝えたかっただけなのに。言葉を交わさず離れるなんてことを、したくなかっただけだった。そんな別れ方をすれば、きっと何かあるたびにステイルを思い出す。忘れられないだろう。

 けれど、ステイルに声をかけたことを後悔していた。

 こんなにも惨めで泣きたい気持ちになるなんて。自分への悪口を、こっそり聞いてしまったような、恥ずかしさや悔しさに似た気持ち。ゆっくりゆっくり、胸の奥底から熱で溶かされて、やがて大きな穴が開いてしまうのではないかという痛みがあった。
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