花嫁に読むラブレター
ステイルが腕を掴んでいるのとは逆の手をゆっくりとマイアの頬に添わせる。続けて、今度は静かに目を閉じ、そのまま優しく触れるような口づけが落ちてきた。
マイアの瞳から、なぜだか涙がぽろぽろ頬を伝って落ちる。
心臓が破裂しそうなほど跳ねている。目を閉じることも、呼吸をすることも忘れたマイアは、ただひたすらステイルのまつ毛が揺れるのを見ていた。
「――ごめん」
どれくらいの時間が経ったのかもわからない。気がついたらステイルがマイアの身体を押すようにして離していた。
木の影がステイルの表情を隠し、俯き加減のステイルの足元にも、暗い影を作っている。ゆらゆらと、影が踊るのをマイアは身を固くしながら見つめている。
「マイア。幸せになって」
放心状態のマイアを一度引き寄せ、力いっぱい抱きしめると、ステイルはマイアの耳元で呟き、身体を離した。
ステイルの声が震えていたことにも気づかず、マイアはただステイルがその場から去っていく後ろ姿を呆然と見つめる。
完全にステイルの姿が消えたあとも、マイアはひとりぽつんとその場に佇んでいた。