花嫁に読むラブレター


 マイアとユンを乗せた馬車が屋敷に到着したのは、もう日が落ち始めた頃だった。

 その間、マイアは馬車の中から景色を流すように眺めていた。隣でユンも静かに外を見つめていた。

 色々な思いが、マイアを苛める。

 あれほど強く心に誓った思いすら、今は砂の山のように触れたら崩れそうに脆かった。

 ユンの顔も見られない。けれど、そんなマイアの心情をわかっているかのように、ユンは無言を貫いていた。表情を見ることがないから、今、彼がどんな様子なのかはわからない。けれど見られないことに、感謝もしていた。

 悟られたくない。
 訊かれたくない。

 今はまだ困惑の海に浮かんでいる。少しあがけば、今にも沈んで溺れてしまいそうだ。けれど、それも今だけ。暗い海の底なんかより、晴れた空を近くに感じられる大地の上がいい。わたしは、這い上がる。

(わたしは、ユンを選んだのよ……。後悔なんてしてないわ)

 心に強く語りかけるが、それでもふいに涙がこぼれそうになる。そのたびに、マイアはさらに遠くの景色を見ているふりをし、ユンから視線を外した。
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