花嫁に読むラブレター
少しだけ先を行くユンの後ろ姿を確認してから、マイアはそっと左手の指を唇に添えた。柔らかい唇の感触が指の先に伝わる。
(どういうことだったの――)
マイアがようやく理性を取り戻し、あの口づけの意味を考えようとすると、そのたびに頭の中に真っ白な靄がかかったようになり意識が定まらない。まるで誰かに考えるのをやめろ、と告げられているようだった。
考えても仕方のないこと。
もしも、を考えたとして、どうしようというのか。
もう、マイアはユンの手を取ったのだから。
繋いだ手から伝わる汗ばんだユンの手を、いまさら離したいとも思わない。風に揺られた髪の下から覗く耳が、真っ赤になっている。ユンが無言でいるときは、大抵が照れ隠しなのだと、もう知っている。そんなユンを愛おしいとも思う。この温もりが、とても力強く感じる。少し前まで、ただひたすらに大声をあげて泣き出したい気持ちだったのに、今はもう心は穏やかだ。自分は、この大空に抱かれているような安堵感に惹かれたのだと、改めて強く実感した。