花嫁に読むラブレター

 中央の大きな噴水からは飛沫が舞い、刈り込まれた木は可愛らしい動物の形で佇んでいる。遠くに見えるのは薔薇だろうか。赤や黄色の鮮やかな花が見える。ゆったりとくつろげるベンチや日時計、それに小さな池の上にはボートまである。明るい時間帯にこの場所を訪れたなら、さぞ楽しいだろう。マイアはそう思った。胸の表面を、とんとんと小さく小突かれているような興奮をマイアは覚えた。知らず知らずに足も速くなる。

(ここに……住むの?)

 ユンに導かれて、どんどん先へ進むが一向にお屋敷の入口が見えない。それどころか深い森に迷い込んだかのような錯覚に陥る。もう遠くなってしまった施設から見えていたお屋敷も、とても立派なものだった。ユンの存在を知らなかったときから、この場所を夢見ていた。街に下りるたびに眺めては、想像に花を咲かせて、煌びやかな心地のまま買い物をしたものだ。けれど、実際この場に立ってみると、想像を軽く超えてしまっていた。

 まさか、こんな広いお庭があるなんて、あの場所から見ていたときは思ってもみなかったのだ。
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