花嫁に読むラブレター
唐突に、緊張感が走った。
知らない場所、自分とは縁遠い場所。ここに、自分は住むのだ。
今まで施設の子供たちや、育ててくれたマリーおばさん、ブラウンおじさん。彼ら以外に親しい人など、街に店を構えるミリア姉さん以外には誰一人としていない。これまで気づく環境にいなかったせいで、自分自身も知らなかった。けれど、マイアは人見知りをする性格らしい。いまだ見ぬユンの父や母。こんな広いお屋敷に住む方々と、うまくやっていけるのだろうか。厳しいのだろうか。マイアの危うい性格を、あれもこれもと注意されてしまうのだろう。
そう思ったら、マイアの呼吸が乱れだした。緊張しすぎて、うまく息ができない。心臓の音が鼓膜に響く。どきどきと、体中を流れる血がそろいもそろって競争しているかのようだ。いまだかつてない緊張に、マイアの顔が青ざめる。
しかし、たとえどんな方々だろうが、うまくやっていかなくてはいけないのだ。
ユンの家族とマイアは、今日から家族なのだから。
子供のように、嫌なものは嫌だと避けてとおれるわけがない。人見知りだ、と言い訳ができる年齢ではないのだ。