BLACK



死神?と"黒"の言葉を復唱した私に、彼は微笑し深く頷いた。


ーーー死神とは、生命を司るとされる伝説上の神で。

冥府においては魂の管理者。




"死を司る神"であり、"冥界を支配する神"

それが、死神。


実際に存在するなんて、誰が考えるだろうか。
タロットカードとかで出てくる死神は、黒いベールのようなものを被った骸骨。


まあ、魂を狩る道具らしい大きな鎌は逸話と変わらないらしいが。



ドクリ、ドクリ、

心臓を打つ音がやけに大きく響く。隣の部屋からは、翔吾が誰かと電話でもしているのか。時々笑い声が聞こえてくる。


もしかして、これはあまりにもリアルな夢なのかもしれない。

そうだとしたら、大声でも出して助けを呼べば目が覚めるんじゃないか。すう、と息を吸い込んだ私は、声を張り上げた。



「翔吾!助けてーッッ!」


部屋中に響き渡る私の大声に、死神と名乗った"黒"は面食らったようにポカーンとしていた。

防音ではない私の部屋と翔吾の部屋を区切っている一枚の壁。多分、私の声は翔吾に届いた筈。


この夢は、刺激が強すぎる。




と。


死神は、見開いていた双眼をゆるりと細めると。声を上げて笑い始めた。



< 17 / 19 >

この作品をシェア

pagetop