BLACK
死神?と"黒"の言葉を復唱した私に、彼は微笑し深く頷いた。
ーーー死神とは、生命を司るとされる伝説上の神で。
冥府においては魂の管理者。
"死を司る神"であり、"冥界を支配する神"
それが、死神。
実際に存在するなんて、誰が考えるだろうか。
タロットカードとかで出てくる死神は、黒いベールのようなものを被った骸骨。
まあ、魂を狩る道具らしい大きな鎌は逸話と変わらないらしいが。
ドクリ、ドクリ、
心臓を打つ音がやけに大きく響く。隣の部屋からは、翔吾が誰かと電話でもしているのか。時々笑い声が聞こえてくる。
もしかして、これはあまりにもリアルな夢なのかもしれない。
そうだとしたら、大声でも出して助けを呼べば目が覚めるんじゃないか。すう、と息を吸い込んだ私は、声を張り上げた。
「翔吾!助けてーッッ!」
部屋中に響き渡る私の大声に、死神と名乗った"黒"は面食らったようにポカーンとしていた。
防音ではない私の部屋と翔吾の部屋を区切っている一枚の壁。多分、私の声は翔吾に届いた筈。
この夢は、刺激が強すぎる。
と。
死神は、見開いていた双眼をゆるりと細めると。声を上げて笑い始めた。