BLACK
「…は、っあはは!君って、なかなか馬鹿だね」
「な…ッ!?」
「"何の仕掛けも無しで"、俺が此処に居ると思ったか?」
「……」
クスリ、嘲笑的な笑みを口元に形どった死神は。
私を見据えるなり、酷く冷酷なダークブルーをギラつかせた。
「嘗めるなよ。今すぐ、狩ろうと思えばお前の魂なんて一瞬で消えるん
だからな」
抑揚を感じさせない声音で、そうゆっくりと言の葉を紡いだ死神。
色を感じない表情に、ぞくりと背中を冷たいものが駆け上がった。
震える体を必死に誤魔化そうと、出来るだけ声を張って喋る。
「嘗めてなんて、ない…!」
「…」
「ただ、夢だと思いたくて…。状況が、状況なんだもん」
いきなり、死神だなんて言われても。
人間ではないだろうと、心の何処かで思っていたとしても。それを簡単に誰が信じられる?
……無理に、決まってるじゃないか。
鎌だって、本当は怖くて怖くて泣きたくなった。
それでも、ペースを、私自身を乱しちゃいけないという思いだけがそれを食い止めていた。
キッ、と私は死神を睨み付けて。
「貴方に、人間の恐怖なんて分からないでしょう」