BLACK
ローファーを履いた脚で、ゆっくりゆっくり歩道橋の階段を上っていく。
どくり、どくり。
全身を渦巻くように駆ける感情はとても説明しがたいものがある。
階段を上りきり、見えた黒。その前を今通り過ぎようとしているOLさん。
す、と通り過ぎた彼女を黒は一度視線で追いかけるが直ぐに興味なさげにまた空を見上げる。
ほら、あれだよ。
違和感の一つは、あれ。
彼の前を通り過ぎる者、誰一人としで彼を全く見ようとしない゙のだ。
いや、まるで゙見えていないかのような゙態度。
黒は目を奪われるほど、言わば美青年と言えるほどの容貌。妖艶と言える色気を男のくせに持っていて、誰だってチラ見くらいはするはずなのに。
――――彼の周りの、世界がオカシイ。