BLACK
私は、ゆっくりと一歩一歩彼との距離を縮めていく。
丁度その゙黒゙を通り過ぎようとした時、空を仰いでいた彼の視線が怠惰な動きで私へと向けられる。
…日本人、ではないのかもしれない。ダークブルーの双眼は吸い込まれそうなほどに深い。
いつもはわざと見ないようにして、通り過ぎるだけなのだが。
その日の私は何故か―――――――…
絡まった視線。
「…こんにちは。」
そう、私が控えめに頭を下げて挨拶をすれば。黒は驚いたように目を見開いた。
そして、
「……へえ?」
そう呟き、ニヤリと口角を引き上げたのだ。