BLACK
それに微細にだが眉根を寄せた私。ただ挨拶をしただけなのに、どうしてそんなに物珍しげな顔で私を見るんだろうか…。
と。
「こんにちはお嬢さん。」
黒はとても綺麗に微笑んで見せると、そう挨拶を返してきた。
なんだか、普通とは違う、よく分からない感情を覚えた私だったがそのまま男の前を通り過ぎた。
階段を下り始めた所で、ふと振り返り見たそこには。
「…あれ、…?」
つい先程までいた筈の黒の姿がそこにはなくなっていた。
足を止め、手すりから上半身を乗り出すようにして歩道橋の下を探すがそれは見当たらない。
あの数秒で、どこに?
何だか言葉にし難いもやのようなものが胸の中に残ったが、私は歩道橋を下りた。
――――が、そこで私は90%の確率で確信していた。
「(黒は、)」
人間ではないと思う。