アイドル拾っちゃいました
「こ……なに?」


 ねこは可愛く顔を傾げて聞いて来たが、俺はその言葉を言えなかった。そして考えたくもなかった。ねこが、金のために男に抱かれてたなんて……


「神谷さんがどんな事を想像してるのかは分からないけど、ヒトミちゃんは今の仕事に満足してるわ」


「満足? うそだろ?」


「うそじゃないわ。満足どころか全てを賭けてがんばってる。それはヒトミちゃんだけじゃなく、みんなよ。私以外のみんな。私だけ投げ出して、みんなに迷惑掛けて、心配させて、私、最低……」


 ねこはそう言いながら、瞳を潤ませていった。昨夜もそうやって泣いたのだろう。昨夜と同じく、そんなねこに掛ける言葉は見つからないが、代わりに彼女の肩に手を伸ばし、華奢な体をそっと引き寄せた。


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