アイドル拾っちゃいました
 しばらくねこは、俺の胸に顔を埋めて嗚咽を漏らしていたが、ようやく落ち着いたらしく顔を上げた。


「神谷さんって、優しいのね?」

「そ、そうかな」

「これから出掛けるのに、ごめんね?」

「え、いや別に……って、ゲッ!」


 テレビの時刻表示を見たら、出掛けるべき時刻を10分程過ぎていた。


「俺、出掛けるわ。遅刻しそうだ」

「うん」

「なるべく外に出るなよ?」

「うん」

「誰か来ても出ない方がいい」

「わかった」


 俺は玄関に向かいながら、ねこに注意事項を告げた。ねこは俺の後を着いて来ながら、素直に言う事を聞いてくれた。


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