アイドル拾っちゃいました
「じゃ、行ってくるよ」

 靴を履き、見送ってくれるねこにそう言った。ねこと離れるのは辛いが、嫁さんに挨拶してるみたいで、いいな、こういうの。


「行ってらっしゃい」


「うん。チューは?」


「はあ?」


 いかん。つい調子に乗ってしまった。


「じょ、冗談だよ。じゃっ」


 苦笑いを浮かべてドアノブに手を掛けたら、


「待って!」

 と、ねこに言われ、振り向いたら、ねこの顔がグッと近付き、唇に柔らかいものが触れた。


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