アイドル拾っちゃいました
「あ……」


「これでいいの?」


「う、うん」


「早く行かないと、遅刻しちゃうんでしょ?」


「そ、そうだな」


 ドアを開けて振り返ると、ねこは小さく手を振ってくれた。頬をほんのり紅く染めて。


 俺はあまりな出来事に、しばらくはボーっとしてしまった。玄関のドアを閉め、何歩か歩いた頃、ようやく俺は我に返り、同時に感動が湧き上がった。


 やったぁー!


 ねこも俺に好意を持ってくれたんだよな?

 だからキスしてくれたんだよな?


 誰にともなくそう問いてみた。その通りだとしたら、こんな嬉しい事はない。

 この嬉しさは、高校の時に憧れの彼女に告り、オーケーをもらった時以来ではないだろうか。


 俺はすっかり浮かれてしまい、どうやって会社まで行ったか覚えてなかった。iPodでベリーズを聴く事すら、忘れてしまうほどに。


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