アイドル拾っちゃいました
 宏美には、アパートを出る前から帽子を被ってもらい、サングラスも掛けてもらった。

 CDショップまでは車で僅か数分の距離だが、俺はアパートを出る瞬間から警戒を怠らず、なるべく宏美の姿が隠れるようにピタッと寄り添いつつ、周囲に目を配った。まるでボディーガードのように。


 CDショップの店内でも、本当なら一人でベリーズのCDなんかを眺めたいところだが、それは我慢して雑誌を物色する宏美に寄り添いながら、周囲に目を配った。そしてちょっとでも宏美に視線を向ける人物がいたら、老若男女を問わず、眼を飛ばしてやった。

 なんせ、ココが一番見つかる危険が高いからな。


「お待たせ」

 宏美は手に雑誌を5〜6冊持っていた。

「おお。じゃ、帰ろう」


 宏美がレジを済ませ、外に出て車に乗り込むまでの間も、俺はもちろん警戒を怠らなかった。


< 164 / 253 >

この作品をシェア

pagetop