アイドル拾っちゃいました
「ふう、見つからなかったようだな」


 俺も車に乗り込み、エンジンを掛けながらそう呟いた。


「暁ったら、大げさなんだから……」


「そんな事ないって。もしファンに見つかったら大変な事になるんだぜ。わかってる?」


「それはわかってるけど……」


 宏美は、自分がアイドルだって自覚があまりない気がする。ましてや国民的なアイドルという自覚が……


「ねえ、今度ドライブしたいな」


「ドライブかぁ。うん、いいね。誰もいない海か山か、そんなところまで行ってみるか?」


「うん!」


「よし。今度の週末に行こう?」


 俺はそれを宏美との思い出にして、その後、彼女をベリーズに……

 そう心の中で決意した。



 アパートに戻り、二人並んで外階段を上がっていたら、ピカピカと何かが光った。雷か、あるいは車のライトが反射したのだろうか。部屋のドアを開き、中へ入る瞬間にも光った気がする……


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