アイドル拾っちゃいました
 10日ぶりに出社したが、川島以外は誰も今回の騒動について聞いて来なかった。チラチラと俺を見る目は多いから、関心はあるのだろうが、それが大人の対応というものだろう。


「神谷、久しぶり!」


 パソコンを立ち上げ、鬼のように溜まった未読のメールにげんなりしていると、川島に肩をポンと叩かれた。


「お、おお」


「で、どうだった? 会えたのか?」


 川島は俺のデスクに腰掛け、目を輝かせながらそう言った。俺が宏美と会えたかどうかを聞いてるのだろうが、答えはノーだ。


「いや、会ってないよ。もう一生会う事はないだろうな」


 自分で言って、その事実に悲しくなってしまった。


「そうか……。それは残念だな」


 川島は俺に同情してくれたらしく、沈んだ声でそう言った。


「おまえ経由でお近づきになれるかと、期待したんだがな……」


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