アイドル拾っちゃいました
『おお、なんだ?』


「川島、すぐ来い!」


 川島の声が聞こえるやいなや、俺は要点を言った。叫んだと言うべきか。


『なんだよ、いきなり……。今、仕事中だぜ?』


「いいから来い。来ないと一生後悔するぞ」


 我ながら言い方がちょっと大げさかなとは思ったが、それほど川島にとっては一大事だと思う。


『一生って、おまえなぁ。第一おまえ、どこにいるんだよ?』


「2階の受付ロビーだ」


『ふーん、誰かと面会か?』


「そうだ。おまえに紹介するから、早く来い。あ、名刺を持って来いよ?」


『わかったよ』


 通話を切ってヤコちゃんを振り向いたら、彼女は困ったような顔をしていた。


「すぐ飛んで来るからさ」


 俺は彼女にそう言い、愛想笑いを浮かべた。


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