アイドル拾っちゃいました
 ほんの30秒かそこらで川島がやって来た。肩で息をしてるから、走って来たのだろう。


「おまえ、急過ぎるだろう……」


 文句を言いながらこっちへ向かって歩いて来た川島は、俺の後ろに立つヤコちゃんに目を移すと、途端にギョッとして足を止めた。


「や、ヤコちゃん……。マジかよ?」


 さすが川島だ。ヤコちゃんは帽子にサングラスという格好なのに、一目で彼女と見極めたらしい。


「ヤコちゃん、こいつは俺の同僚で親友の川島っていうんだ。君の事が好きで好きで堪らないらしい」


「な、何を言ってんだよ!」


「あれ? 違うのかよ?」


「違くないけどよ、本人の前ではっきり言われたら恥ずかしいだろうが……」


 川島はヤコちゃんを見つめながら顔を真っ赤にした。こんな川島を見るのは初めてだ。

 そんな川島にヤコちゃんは戸惑っているようだが、あれ?

 彼女の顔も赤く見えるのだが、俺の気のせいだろうか……


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