アイドル拾っちゃいました
「は、はじ、はじめまして。俺、いやぼ、ボクは、か、川島……」


「おい、名刺!」


「お、そ、そうだな?」


 ダメだこりゃ。川島の奴、完全にテンパってやがる。


 川島は、俺に言われて慌てて名刺入れから一枚引き抜いた。

 いったんはそれをヤコちゃんに渡す素振りを見せたが、何を思ったのかペンを取り出すと、名刺に何かを書き込み、それからヤコちゃんに渡した。「よろしくお願いします」と言いながら。


 ヤコちゃんは、川島の名刺を手に取り、一瞬キョトンとしたが、小さな声で「こちらこそ」と言った。


「きょ、今日はこいつにどんなご用で……?」


 川島の質問に、ヤコちゃんは「えっと、それは……」と答えに困った様子だった。たぶん彼女は、川島にどこまで話していいものか判らないのだろう。


 そこで代わりに俺が答える事にした。


「ヤコちゃんは、これを俺に渡しに来てくれたんだよ」


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