アイドル拾っちゃいました
 バカだなぁ。アイドルに気安く触ったら怒られるだろうに……と思ったのだが、ヤコちゃんはビックリはしたようだが、なぜか怒らなかった。そして、


「俺、絶対観に行きますからね!」


 と彼女の手を握ったまま、熱っぽく言う川島の顔を見上げ、「はい」なんて返事をしていた。気のせいかもしれないが、頬を赤くして。


 ひょっとしてヤコちゃん、川島の事をまんざらでもないと思ってたりするのか?



 ヤコちゃんを見送った川島は、気味が悪いほどの満面の笑顔だった。


「神谷、よくぞ俺を呼んでくれたな?」


「だろ? 感謝しろよな?」


「ああ、一生感謝する」


「ところでおまえ、名刺に何を書いたんだよ?」


 だいたい想像はついていたが一応聞いてみた。


「俺の携帯の番号だけど?」


「やっぱりな。でも、掛けて来るわけねえだろ?」


「まあ、そうだけど、ダメ元だろ?」


「まあな」


 俺は、川島のこういうポジティブなところを見習いたいなと思った。


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