アイドル拾っちゃいました
 そう理屈では思っても、そんな簡単に割り切れるわけもない。出会った頃、つまり当時は“ねこ”と呼んでいた頃からの宏美とのあれやこれやが走馬灯のように脳裏を過ぎり、泣きたい気持ちになってしまった。


「ヒロミン、それはヤバイって……」


 不意に川島の呟きが聞こえ、俺はハッと我に返った。ヒロミンが、どうしたって?


 顔を上げてステージに目をやると、ヒロミンと目が合ってしまった。ヒロミンが、切なそうな目で俺を見ていたのだ。


 しかしそれはほんの一瞬の事で、ヒロミンはすぐにヤコちゃんに肩を押され、他のメンバーと共にステージの袖にはけて行った。会場は少しザワザワとしたが、バレてはいないと思う。ところが……


 隣の若い子が、目を見開いて俺の顔を凝視していた。


「もしかして、週刊誌に載ってた人ですか?」


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