アイドル拾っちゃいました
「やるなぁ、ヒロミン。神谷、おまえ本当に愛されてんだな。嬉しいだろ?」


「え? あ、ああ。でも、複雑だよ。俺はヒロミンも続けてもらいたい」


「それは大丈夫だって」


「え?」


 その川島の言葉を裏付けるように、「ヒロミン、許すから歌を止めないで~!」と、おどけた感じの男の叫び声がしたかと思うと、ドッと笑い声が上がり、やがて会場中から割れんばかりの拍手が起こった。


 ヒロミンはその反応に目を見開いて驚き、深々と頭を下げると、泣き出してしまった。


 ヒロミン、いや宏美。がんばったな?

 俺はステージに駆け上がり、宏美を抱き締めてやりたい衝動を抑え、彼女を見つめた。宏美もまた、手で涙を拭いながら、俺を真っ直ぐに見つめていた。たとえ離れていても、周りが騒がしくても、そんな事は関係なく、俺と宏美の心が通ったと思った。



「バカ、何やってんだよ?」


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