アイドル拾っちゃいました
「私達、事務所と闘う事にしたんです」


 それまで黙っていた宏美が始めて口を開いた。


「そ、そうですか?」


 高山さんは、ヒロミンに話しかけられてドキッとしたみたいだ。


「スケジュールの見直しと、恋愛禁止の解除を訴えます。それをコンサートの最後に発表して、この人が観客にばれちゃって、大騒ぎになっちゃいました」


 「ごめんな?」と宏美に言ったら、宏美はうふっと笑った。


「それはいい。きっとうまく行きますよ」


「そうでしょうか?」


「はい。だって、あの事務所はベリーズで儲けてるんだから、メンバーが団結すれば大概の要求は飲まざるをえないですよ」


「ですよね?」


 まさかタクシーの運転手さんから太鼓判を押されるとは思ってもみなかったが、俺も宏美も高山さんから力をもらった気がして笑顔になった。そう言えばスタッフの若者も俺達の逃走に協力してくれたし、みんなに後押しされてる気がする。


< 247 / 253 >

この作品をシェア

pagetop