アイドル拾っちゃいました
 女は下着類を買い、ついでだから服なんかも買わせた。

 そう高い買い物ではなかったが、安月給の俺にはかなり堪えた。支払いを済ませ、財布の中の残り少ない紙幣を見て「ハァー」とため息をついたら、


「どうしたの?」

 と女は言った。その脳天気な言い草にカチンと来て、


「どうしたのって、それはないだろ? 予定外の出費で参ってんだからよぉ」


 と文句を言ったら、


「お金はちゃんと返します」


 と女は言った。


「はいはい、ぜひそうしてくださいね?」


 まったく当てにしてないので、バカにしてそう言ったら、


「すぐにお返しします」


 と女はムキになって言った。女と金の話をするなんて、俺も小さいなあと反省し、


「いや、無理しなくていいって。金なら貯金があるし、ちょっと大げさに言いすぎた。だから気にしなくていいよ。な?」


 と言ったのだが、女は何やら考え込んでるようだった。


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