アイドル拾っちゃいました
 その瞬間、ねこがピクッと反応し、緊張が走った気がした。たぶん勘違いではないと思う。ねこって、追われる身なのか?


「誰だろう。ちょっと出て来るな?」


 そう言うと、ねこは強張った顔でコクッと頷いた。


「心配すんなって」


 もちろん事情は知らないが、安心させてやりたくて俺はそう言った。

 どうせ近所のおばさんか、宅配便のお兄ちゃんかだろうと思いながら、ドアを細く開けると、来訪者は意外な事に若い女だった。


 しっかり厚めのメイクを施し、甘い香水の臭いをさせた女で、奇妙な事に、ねこと同じく帽子を被り、濃い色のサングラスをしている。


「どなた……」ですか、と聞こうとしたら、


「ここに、ねこちゃんはいますか?」


 女はそう言った。


< 35 / 253 >

この作品をシェア

pagetop