アイドル拾っちゃいました
 くそ、聞こえねえ。

 俺は壁の裏に隠れ、二人の会話に聞き耳を立てたが、二人は小声で話してるらしく、何も聞こえなかった。


 間もなくして、ドアが閉まる音がした。ヤコちゃんという女は、もう帰っちまったらしい。


 ん? ヤコちゃん?

 どこかで聞いたような……


 ねこは手に封筒を持って居間に戻って来た。もちろん俺は、その前に元のようにテーブルの前に何食わぬ顔で座っていた。


「もう帰ったのか? ヤコちゃんって子」


「うん、あの子は忙しいから。ところで神谷さん……?」


「ん?」


「あの子の事、知ってる?」


 ねこは、やけに真剣な顔で俺にそう聞いてきた。


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