アイドル拾っちゃいました

　それは、路上にうずくまる何かに向かい、腰を屈めて「おい、どうした？」とか言いながら手を伸ばす俺の姿だ。

　ミーかパーを拾った時のものか？

　いや、違うな。違う気がする。もっと最近だ。ごく最近。例えば、昨夜？

　げっ！ また拾っちまったのか？ 子ネコを……


　俺は拾っちまったらしい子ネコを探すべく、辺りを見渡した。食器棚の脇の隙間や冷蔵庫の裏なんかも覗いたが、見つからない。台所にはいないようだ。


　大して広くもない、と言うより狭いアパートの中。探すのはそう難しくはないはずだ。


　２つしかない部屋の寝室に使ってない方、つまり居間として使ってる方の部屋に向かいつつ、どんなネコだったか、それを必死に俺は思い出そうとした。例えば色とか……。すると、


『お腹空いちゃった』


　不意にそんな言葉が脳裏を過ぎった。