アイドル拾っちゃいました
 うわっ、参ったなぁ、と思った直後、もっと参った事になってしまった。ねこの長い腕が、俺の胸の辺りに巻き付き、抱き着いてきたのだ。


 ねこは俺の肩に額を付け、静かな寝息をさせている。


「ちょっと、ねこ? ねこさ〜ん」


 ねこの肩をポンポンしながら声を掛けてみたが、ねこに起きる気配はまったくない。


 ねこの肩をグイッと押したら、それは逆効果でもっと強く抱き着いて来た。


 気持ちよく寝ているのを起こすのは可哀相だし、押しやるにもどこを触ってよいやら分からない。

 また、自分がねこから離れようにも、既に俺の体はベッドの縁にあり不可能。


 俺は仕方なくそのままの体勢で目をつぶり、もう一度ヒロミンを思い浮かべた。しかしなぜかヒロミンとねこのイメージがダブり、気が高ぶって眠気はどこかへ行ってしまった。


 悶々、ムラムラしながら時間だけが過ぎ、ようやく寝たのは外が白々しだした頃だった。


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