アイドル拾っちゃいました
「そういう事だ。そもそも俺達は、とっくの昔に終わってたけどな」


「あたしはイヤ」

「はあ?」

「あたしは暁と別れたくない」

「んなこと言ったって、俺はもう無理だから。正直に言えば、おまえの顔も見たくない」

「ひどい……」


 ちょっとハッキリ言い過ぎたかな。明美はかなりショックを受けたみたいだ。


「どうしてなの?」


 明美の目が潤みだした。こいつ、本気で俺と別れたくないらしい。だったら他の男の話なんかしなければいいものを、つくづく分からない女だ。

 それに嫌気がさしてるって言っても、こいつはたぶん理解できないだろう。だったら、もっと分かりやすい理由を言ってやるとしよう。


「俺、好きな子ができたから」


 どうだ? これなら分かるだろ?

 ねこを思い浮かべながら“好きな子”と言ったのだが、なぜかヒロミンの顔もチラつくのだった。


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