最後のキス



「十歳も年下の彼ができた?!なんて羨ましい!」


友達から羨ましがられた尚樹との恋。


尚樹と出会ったのは仕事の飲み会で行った居酒屋。

そこで働いていた男の子が尚樹だった。



「お姉さんも大変やなあ。オヤジの中で酌してさ。なんなら俺が連れ出してやろっか」


慣れない酒の席で、ふらふらになりながらトイレに立った私を待ち構えていたように尚樹はそこにいた。


初めて見た尚樹の印象は、強引な、チャラい男という印象なだけだった。


けれどその後、注文するたびに、私たちの部屋に持ってくるのは尚樹で────。


チャラい奴だと思っていたのに、部屋に持ってくる態度はキチンとしていて


「失礼致します」

と、正座して、深々と畳に頭をつけて礼をするさまは、古風な日本男児のようだった。


見た目は片耳に3つのピアス。茶髪をカチューシャで上げた今時の男の子。

私はそのギャップにいつしか目を奪われていて、飲み会が終わる頃には、


もうたぶん、きっと恋をしていた。


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