オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
「……なんすか。人の顔見て溜め息って。今日変っすよ、先輩」
「知ってるから少し黙ってて」
取り返した用箋ばさみで、俯く顔をさらに隠した。
あーーーっ!!って叫びたい。
この表白しがたい感情を声にして放出したい。
なんでこんな、いちいち反応しちゃうんだろう。
虎鉄が今までに接したことのないタイプとはいえ、真に受けなきゃいいだけなのに。どうしてか、難しい。
ちょっとズレてるけど、虎鉄なりの褒め言葉だとか、気遣いだって分かってきちゃったからかな。
でも虎鉄の言動って、先輩を慕ってるっていうより……。
うわあ、もう、こんな思考を虎鉄相手に巡らせていること自体ありえないのに!
「バンビ先輩なしたの」
「さあ……。フラストレーションでも溜まってんだべ」
「なーんだ。欲求不満か」
「ちっっがう!! 疲れてるの! ひとりでも大変なのにふたりもいるからっ」
黙ってると欲求不満で片付けられちゃう私の身にもなりなさいよ!
「なーんか俺らのせいにされてるっぽいけど、どう思いますトラさん」
「まあ不服ではある」
「私の方が2割増しくらい不服に思ってるから。そう顔に書いてあるでしょ」
口をへの字に曲げる私に、虎鉄が腰をかがめて顔を近づけてきた。
ドキッとなんてしない。だって見つめられてるっていうより、眼付けられてるみたいだから。超至近距離で睨んでくるヤンキーみたい。映画で見たことある。
「じゃあ、遊びに行きます?」
「……、……は?」