オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
・動機と動悸
「虎鉄が何をしたいのかさっぱり分からない……」
ずん、と暗くなっている私を、休憩に入ったミヤテンとミーアが見つめてくる。
「顔合わせたらなんて言ったと思う? いつも通りのテンションで、『もはや俺らボランティア部だと思うんすよ』って……。他にもっと言うことがあると思わない!?」
昨夜、強引に接吻、そのまた先までしてきたというのに! 私は放課後になるまで、どうしようってそわそわしてたのに! 何事もなかったように拡がらない話をしてきた虎鉄の脳内はどうなってるの!?
「どうせ楓鹿が先に『昨日のことは気にしてない』風に振る舞ったんでしょ」
「だって、それは……誰だって気まずいのは嫌じゃん!」
「そんなバレバレの先手打たれて掘り起こそうとする奴、そうそういないと思うぞ?」
「掘り起こしてくると思ったの! あのヤンキーは人に合わせたりするような奴じゃないもんっ」
あんなに我が道を往く虎鉄が、少しも昨日のことに触れてこないなんて、思わなかった。私は考えただけで床を転げ回りたくなるのに。
どうしてキスなんか……。
私に必要なのは自分だ、って。
私を可愛いだけじゃないと思ってる、って。
嘘じゃないことをキスすることで証明したのかもしれないけど、理解できたのは、私は女として見られてるってことだけ。キスもその先もできる対象だってことだけ。
そんなのとっくに分かってた。
向けられる言葉や態度の源にあるのが恋なのかは判断できなくても、虎鉄は大真面目に言ってるって分かってた。
だからこそ、好きなら好きだと、告白してくる人なんだろうなって思っていたのに。