オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
「なんだそれ。勘違いしてる気はなかったけど、ねぇわ」
腕を引っ込めた虎鉄は、黙る私をぴしゃりとはねのけた。
「嫉妬はするけど、そんな素振り見せるだけ? 肝心なことは言わねえで、期待だけさせて、追わせることしか考えてねえってか」
吐き捨てるように嘲笑した虎鉄の眼光は鋭さを増し、私の動きを封じ込める。
「先輩面も姫気取りも、そこまでくると可愛くねえな」
……そんなに睨むことないじゃない。
怒って立ち去るくらいなら、答えるまで帰さないとか言わないでよ。
「答え損じゃん……」
ひとり取り残された私は、虎鉄の足音が消えたあとに呟いた。
否定すれば良かったのかな。
ありえないって思ったことも、おもしろくないって思ったことも、本当なのに。どうしてそうなるの、なんて言い返せるわけないじゃん。
虎鉄の言う通り、結局は嫉妬した素振りを見せただけで。肝心なところでも先輩ぶって、接してきたんだから。
怒らせたからって、急にいじらしく振る舞えないくらいの自尊心だってある。そんなもの邪魔なだけだったと後悔しても、追い掛けるだけの気概を示せない自分に、もっと悲しくなることだってある。
私は自分を押し殺したりはしないけど、言葉を選ぶときも嘘をつくときも、虚勢を張るときだってあるよ。
「……なにやってんだろ」
そうやって、雁字搦めになってきたじゃない。
そうやって今まで、振られてきたくせに。
だけど何が正解なのか、分からない。