オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
虎鉄はあの頃の私と同じか、もしかしたらそれ以上、あの元カノのことがすごく好きだったんだろうなって。
リアルな想像がついちゃったから余計に嫉妬して、虎鉄とそんなに親密な関係だったことも、別れたあと笑って話せることも、羨ましかった。
私は2年生になっても、大好きだった彼と一度だって話していない。見掛けても、目を逸らすことにしてる。
お互い、合意のもとで別れたのに。彼と別れてから私は、先に告白したほうが好きの気持ちが大きい気がして、告白を待つようになった。
短期間で数人と付き合ったのは、振られるたび、どこかで見返したいって気持ちがあったからなのかもしれない。
李堵先輩のときも、越白先生のときも……虎鉄と出会ってからも。
堆く積もったプライドやトラウマの山に立ちながら、もっと、今までよりもっと、幸せになってやるって。
それを叶えてくれる人を、高みから探していた。
そうしているあいだに今度はそこから降りられなくなって……虎鉄にばかり、頑張らせた。
頑張らないほうがしんどくて、逃げたほうが自分を嫌いになるって、知っていたのに。
ず、と鼻をすすったら、バシーン!と後頭部を叩かれた。
「いったい! 何……っミーア!」
頭を押さえて振り返ると、呆れ顔で立っていたミーアが私を見たまま溜め息をついた。