オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
・卍巴のRHR
悪いことは重なると言うけれど、果たしてこれは悪いことなのか。
『本日は月一清掃の日です。各クラスの美化委員に従い、担当場所を隅々まで綺麗にしましょう。なお、今回は特別に総指揮官を迎えておりますので、何かあれば速やかに1年E組の蕪早くん、場工谷くん、2年B組の高遠さんを訪ねてください。繰り返します』
昼休み終盤の教室にどっと笑いが起こったのは、校内放送で私の名前が出たからだ。しかも繰り返されるし。
「あれ、違う? ま、いっか。できたぞ高遠」
隣で何かを書いていたミヤテンが、たすきを渡してくる。
「……漢字、間違ってる」
総指揮官って書いたつもりなんでしょうけど、総指〝輝〟官になってるから。
「いいじゃん、輝いてるんだから」
「そういう問題じゃない!」
前の席に座るミーアに抗議していると、ミヤテンが勝手にたすきを頭から通してくる。
この、ミス・オリガクという金色文字のたすきを付けたことのある私に、黒いマジックで『特別総指輝揮官』なんて書いただけの白いたすきを付けさせるなんて!
「悪夢だ……今起こってることは良くないことが起こる前触れなんだ……」
「ミヤテンが書き間違っただけで何言ってんの。今日が月一清掃の日なんて、みんな知ってたでしょ」
「私が総指揮官になるなんて誰もが想像してなかったでしょ!」
「コンコンが知らせにきたときは笑ったよなー。さっきの放送もおもしろかったけど」
ピンポンパンポーンってスピーカーから流れ出したときの『来た…!』って耳をそばだてたクラスメイトときたら。